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日本経済新聞 2012/12/22付
http://www.nikkei.com/article/DGXDZO49859690R21C12A2W14001/
若者の就職難 少子化なのになぜ?
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「少子化で若者が減っているのに、なぜ就職環境が厳しいのですか」。
就活中の大学生が事務所を訪れた。
入試は上の世代より競争率が低かったのに不思議だという。
「若者は“貴重”なはずなのに」。
探偵、深津明日香が調査に乗り出した。
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■ミスマッチ解消では限界
明日香はリクルートが主催する就職支援セミナーを訪ねた。
内定のない大学4年生や既卒者に、企業向けの応募書類などの書き方などを指導している。
「私の長所は責任感があるところです……」。
リクルートスーツの若者たちが面接の練習をしていた。
「しっかりしているし、すぐ内定を取れそうな人ばかりに見えるけど」
明日香が参加者に話を聞くと、私立大4年生は
「3年生の時は大学の課題で忙しく、自分が知っている大企業ばかり回っているうちに出遅れた」
と焦っていた。
正社員の職を探す契約社員の男性(25)も、最初の会社を辞めてから再就職に苦戦中だという。
「意欲や能力のある人も苦労しているのね」。
明日香が厚生労働省を訪ねると、若年者雇用対策室長の久知良俊二さん(43)が
「学生への支援が不十分だった面があります」
と説明した。
高卒者は、先生などにお膳立てしてもらい地元の中小企業に就職する。
ところが自力で就職先を探す大学生が増え、採用に意欲的な中小企業との間を結ぶパイプがなくなった。
リクルートワークス研究所の調査では、2013年春卒の学生1人に対する求人数を示す求人倍率は、従業員5千人以上の企業では0.60倍と狭き門だが、300人未満の企業では3.27倍と逆に採用枠が学生を大幅に上回っている。
そこで、学生と企業との橋渡し役として
「10年に新卒向けハローワークを設け成果を上げ始めています」
と久知良さん。
東京新卒応援ハローワーク(東京都新宿区)を訪ねると、室長の川野辺哲夫さん(52)も
「紹介できる先がなくて困ったことはありません」
と言う。
学生の相談役、ジョブサポーターの北山四郎さん(57)は
「就活が遅れた人や自分の適性をじっくり考える機会がなかった人も、話を聞いて自己分析を手伝い、面接指導をすると大半が内定を取る」
という。
「企業と学生の間で不幸なすれ違いが起きていました。
求人はあるので、仲介に力を入れれば解消すると思いますよ」。
明日香が報告すると、所長が首をひねった。
「そんなに安心していいのか。
もっと大きな経済構造の変化が影響しているような気がするぞ」
明日香がみずほ総合研究所を訪ねると、主任研究員の岡田豊さん(45)が
「そもそも、本当に中小企業の求人倍率が3~7倍もあるのか疑問です」
と指摘した。
計画通り採用する大手と違い
中小は「できればこれだけ採りたい」という希望
に過ぎず、どこまで本気なのか分からないという。
「“なぜ中小に行かない”と若者のせいにする風潮がありますが、企業側も仕事や福利厚生の実態を十分開示しないなど努力不足。
現状ではミスマッチは簡単に解消しないでしょう」
次に話を聞いたリクルートワークス研究所の研究員、徳永英子さんは
「ミスマッチが解消できても、就職環境が良くなるとは限りません」
と指摘する。
来年4月には企業に定年後も65歳まで希望者全員の雇用を義務付ける法律が施行される。
「外国人の採用が広がり、育児休業制度などの充実で、子どもができても働き続ける女性も増えています」。
これらは歓迎すべき雇用環境の変化だが、その分、新卒採用の枠は狭まる可能性がある。
■企業の雇う力自体に陰り
労働政策研究所では、所長の浅尾裕さん(59)が
「日本企業の雇用吸収力自体が低下し、正社員を解雇できない分、新卒採用を抑制して調整している面があります」
と指摘した。
かつては不況期でも新卒採用はあまり減らさなかったが、1990年代半ばから景気との連動性が強まった。
日本で、長期雇用のメリットが大きい製造業の比率が下がり、パートなどが中心のサービス業の比率が高まったことも影響したとみる。
浅尾さんは
「今後、4~5年間は団塊世代が65歳を迎えて大量退職するので採用はあまり減らないでしょう。
ただ、その後は採用数の増減が大きくなるかもしれません」
と警告する。
労働政策研究・研修機構の推計ではゼロ成長が続くと、30年の20~24歳の就業率は63%にとどまる見通しだ。
次に話を聞いた一橋大学准教授、川口大司さんも
「低成長が続くなか、日本の雇用構造が変化しつつあるとみるべきでしょう」
と指摘する。
正社員だけ見ると、過去と比べ離職率はあまり変わっていないが、非正規労働者の比率が増え、社会全体では勤続年数も短くなった。
しかも
「原因が低成長自体にあるので、労働政策として打てる手はミスマッチの解消などに限られます。
ただ、実証研究が進み、限界も明らかになってきました」
と川口さんは明かす。
例えば国が失業者に職業訓練をすれば新産業にスムーズに転職でき、失業率が下がると期待されてきた。
しかし、能力が同程度の人を対象に職業訓練の有無と就職の関係を調べると、大きな差がなかった、という研究もあるという。
今後の対策として
「企業に雇用確保を優先してもらい、低所得者には国が別途、減税と現金給付などで支援するような制度も検討課題になっています」
と川口さん。
明日香は
「結局、若者が減る以上に、雇用が減っていたのね。
産業を育てないと根本的な解決にはならないわ」
とまゆをひそめた。
事務所で明日香が報告を終えると、所長が
「うちだけでも雇用に貢献しようと警備員を採用したぞ」。
驚いた明日香が振り返ると、ネズミを追って猫のミケが走り去った。
「ついに猫の手まで借りるのですね」
■<外国ではもっと深刻? 一括採用、失業を押さえる面も>
実は若者の就職難は日本だけの現象ではない。
国際労働機関(ILO)の推計では、15~24歳の失業率は世界全体で12.7%。
先進国は欧州債務問題の影響もあり17.5%で、日本の約7%よりも高い。
海外に比べ日本の若年失業率が低いのは新卒者を一括採用しているためだ。
最近は「既卒になると就職できない」と評判が悪いが、こうした仕組みがない国々では、新卒者でも経験を積んだ労働者と競いながら職を探さなければならず、なかなか職に就けない。
企業が学校を卒業したばかりの若者を一斉に雇って教育する一方、労働者側も長く勤める「日本型雇用」は、戦前にも一部の企業に存在した。
ただ、現在のように広がったのは高度経済成長期だ。
1950年代以降、人手不足の東京や大阪には、東北地方などから大勢の中卒・高卒の若者が集団就職した。
当時の東京・上野駅の情景を歌った「ああ上野駅」には、就職列車が登場する。
「金の卵」と呼ばれた若者たちだったが、JRの上野駅前に立つ歌碑は「親もとを離れ、夢と不安を胸に抱きながら必死に生きていた」と伝える。
若者にとって就職は、今も昔も人生の難関なのだ。
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理由は簡単である。
人手を必要としない産業構造に変化している、ということ。
つまり、人にやさしい環境になりつつあるということ。
ロボットが導入され、どんどん職場は人にやさしくなるが、その分、人手はいらなくなる。
ということは、人が余ってくる。
それが、若者の就職難となる。
これを解消するには、
①.オートメあるいはロボットの採用をやめるか、
②.人口抑制に取り組むか
である。
現在の過剰人口が解消されないかぎり、抜本的解決はないだろう。
【人口爆発から大飢餓へ】
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