地球飢餓の足音は高まっている。気候気象は平穏期をすぎ激動期に入りつつあるという。「なんでもアリ」の激甚気象が半世紀にわたって続くとも言われている。別の研究では50億人が、2050年より前に異常気象を経験する地域に暮らすことになる。また「気候逸脱の時機」と呼ばれている転換期は今世紀半ばにくるとも言う。今は見えていないが、人類という生物種に食糧危機が迫りつつあるといえるのかも。
2013年8月12日月曜日
最近の天気は何だかおかしい:激甚気象の中で
●7月の平均気温の平年差。西日本の日本海側や北海道で平年より気温が高いが、東北の太平洋側は平年並みかやや低いところも
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日本経済新聞 2013/8/7 6:30
http://www.nikkei.com/article/DGXNASFK01033_R00C13A8000000/
最近の天気は何だかおかしい
気象予報士 伊藤みゆき
「このところ天気がおかしいよ」という声を多く聞きます。
たしかに、梅雨明けが早い地域もあれば、まだ梅雨が明けていない地域もあり、猛烈な暑さが続いた地域もあれば、気温が上がらない地域もあり、大雨で災害が発生した地域もあれば、雨が全く降らない地域もあります。
ここで、7月を気温・日照・雨のデータを振り返ってみます(7月30日までの値)。
まず、気温です。
7月の平均気温の平年差。西日本の日本海側や北海道で平年より気温が高いが、東北の太平洋側は平年並みかやや低いところも
全般に7月は平年より気温が高いところが多くなりました。
特に福岡では7月の平均気温が29.9度で、記録的な暑さとなった2010年の8月(30.3度)に次ぐ暑さです。
際立ったのが後半の「猛烈な熱帯夜」です。
7月25日の最低気温は29.8度で123年の統計史上最も高くなりました。
29日にはそれに次ぐ29.7度までしか下がらないなど歴代の上位5記録中、3つを今年の値が占めることになっています。
また、6日に九州から東海に先んじて梅雨が明けた関東甲信地方は、猛烈な暑さの「梅雨明け10日」になりました。
「梅雨明け10日」とは、梅雨が明けて10日程度は太平洋高気圧の勢力が強く、安定した夏空が広がりやすい…という天気の言葉です。
東京では6日からの10日間のうち、半分が35度以上の猛暑日・半分が34度前後となり、11日には群馬の館林で今年全国最高の39度5分を観測。
「この夏はどうなってしまうのだろう?」と心配した人も多かったことでしょう。
ただ、梅雨明け10日が終わった途端、今度は北からの比較的涼しい高気圧の影響を受けて関東の暑さは収まりました。
このタイミングで、宮城県など東北の太平洋側は「やませ(冷たい北東気流)」で、日差しが遮られ「長袖シャツでも肌寒い」くらいの日が続くようになりました。
それは日照時間をみると一目瞭然です。
●7月の日照時間の平年差。東北地方は平年の半分程度という所も多い。気象庁HPより
まだ梅雨の明けていない東北地方は平年の半分程度しか太陽が照っていません。
東北地方には19日に「長雨と日照不足に関する情報」が出されました。
梅雨前線が天気図に表れていなくても、雲の帯が東北地方にかかった状態が続き、特に太平洋側は海風が吹き込んで霧や霧雨の日も多くなりました。
一方で西の方は連日晴れて暑さが続き、「雨が欲しい」というお便りが番組にも寄せられたほどでした。
●7月17日の雲画像 本州付近の雲の帯を境に、西の方は太平洋高気圧に覆われているが、関東以北には比較的涼しい空気が流れ込んでいる。気象庁HPより一部加工
雨は「欲しい」地域と「もう要らない」地域と極端です。
●7月の降水量。東北地方で平年より多く、関東以西の太平洋側は平年より少ない
●降水量の平年比(気象庁HPより)
最も雨が多かったのが山形県で、海沿いの酒田では776.5ミリと平年の4倍近くになっています。
同じ酒田市内のアメダス(上草津)や、真室川町のアメダスでは1000ミリを上回りました。
7月3日からの2週間で度々大雨に見舞われ、被害も発生しました。
一方で、奄美大島や久米島では雨量がゼロ。那覇も4.5ミリと平年の3%しか降っていません。
沖縄や奄美には「少雨に関する情報」が出されています。
関東地方では、簡単に解説できない事態がありました。
東京の世田谷では22日までの雨がたったの12ミリしか降っておらず、翌23日午前中に「少雨に注意」という情報が出されました。
ところが、その夕方には約100ミリの雨が降ったとみられ「記録的短時間大雨情報」が出されたのです。実
際のアメダスでも10分間で27ミリの雨が観測され、1時間降り続いたら162ミリになる豪雨でした。
大雨が降ったのに少雨とは…の理由は、23日の雨は一時的で5月からの少雨を解消するには至らず、引き続きまとまった雨が予想されないからです。
「記録的短時間大雨情報」は、現在の降雨がその地域にとって災害の発生につながるような、稀にしか観測しない雨量であることをお知らせするために発表されるもので、27日には栃木・茨城・秋田に出され、28日には山口や島根、29日には北海道の留萌、30日には新潟と島根と、連日のように発表されています。
ここ数日の日本付近には、それだけ暖かく湿った空気が流れ込んでいて、災害につながるような雨がいつどこで降ってもおかしくない状態となっているのです。
甚大な被害が出た山口では、山口市で143ミリ・萩市の須佐で138.5ミリと「1時間雨量」の全国歴代11位と14位になるような記録的な雨を観測しました。
7月の不安定な天気の原因は、夏の高気圧がしっかり張り出さず(=北陸・東北の梅雨明けず)、北からの高気圧も度々現れ(=東北太平洋側の低温や日照不足)、日本海には動きの遅い寒気が居座った(=局地的な豪雨)ことが挙げられますが、8月に入ると夏の高気圧の勢力がやや強まりそうです。
週末以降は北陸や東北も晴天が予想され、いよいよ夏到来を思わせます。
東北や北陸の梅雨が8月にずれ込むのは、梅雨明けが特定できなかった2009年の前年、2008年以来となりそうです。
8月前半の傾向は「沖縄は雨が少なく、西日本は暑く、北日本は不安定」です。
引き続き猛烈な暑さや天気の急変に用心しつつ、この夏を元気に乗り切りましょう。
伊藤みゆき:
気象予報士。証券会社社員を経て、気象予報士に。日本テレビ衛星「NNN24」の初代気象キャスターに合格。現在はNHKラジオ第一「ラジオあさいちばん」気象キャスター。 光文社の雑誌『STORY』などで連載を持つなど、幅広く活動中。
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